男装聖女は冷徹騎士団長に溺愛される
「……え?」
「だって、普通に興味深いだろう。まるで夢物語だ。ラディスは気にならないのかい?」
「気にはなるが……今する話ではないだろう」
私がぽかんとしていると、副長は私の方を見て悪びれ無くにこりと笑った。
「ごめんね。最初から疑ってなんかないよ。ラディスが君を本物だと言うなら、君が本物の聖女様に間違いないんだろう。ただちょっと試させてもらった」
それを聞いて私はかくんと肩を下ろす。
……緊張して損してしまったかもしれない。
(なんか、キアノス副長のイメージが変わったかも……)
穏やかで優しいイメージだったけれど、どうもそれだけではなさそうだ。
「でもそんな便利な世界から来たのなら、この世界は酷く不便じゃないかい?」
そう訊かれて、私は苦笑する。
「正直、慣れるまでは色々と大変でした」
「だろうね。早く帰りたいだろうに」
「ハハ……でも、帰り方がわからなくて」
「そうなんだ? 聖女様も大変なんだね」
「あ、でも、今はこの世界で騎士になるという目標があるので!」
ぐっと拳を握って言うと、キアノス副長はふっと笑った。
「聖女様が騎士を目指す、か」
副長はちらりと横目でラディスの方を見た。
「ラディスが君に夢中になる気持ちがわかった気がするよ」
「え?」