男装聖女は冷徹騎士団長に溺愛される
「な、何を……っ」
慌てたような声を上げたラディスと目が合うと、彼はバツが悪そうに私から視線を逸らした。
その耳が赤くなっていることに気付いて私は驚く。
「ずっと不思議に思っていたんだ。冷徹と謳われた騎士団長殿がやたらとひとりの見習いを気にかけているものだから。やっと謎が解けてすっきりしたよ」
それを聞いて、私もなんだか顔が熱くなってきた。
……キアノス副長にもそのことはバレていたらしい。
「それで? 君たちはどこまで行ってる関係なのかな?」
「どっ、どこにも行ってませんが!?」
思わず、そんなおかしな答えが口から出てしまっていた。
するとキアノス副長はぶはっと吹き出した。
「アハハハっ、どこにもって……っ」
「キアノス、これ以上揶揄うのはやめろ」
「ごめん、ごめん」
頗る不機嫌そうなラディスに窘められ、キアノス副長はふぅと息を吐いた。
「じゃあ、そろそろ真面目な話に移ろうか」
キアノス副長の目がそこで変わった。
「それで、偽物の聖女様をどうするつもりだい? ラディス。君のことだから、もう何か考えがあるんだろう?」