男装聖女は冷徹騎士団長に溺愛される
「あ?」
「それで、君がその聖女様から受け取ったものはどこにあるんだい」
「なんでお前にそんなこと教えなきゃならねーんだよ」
不機嫌を隠さずにイリアスが答える。
「彼が言うには、それを持っていると危険みたいだよ」
「はぁ?」
それを聞いて私は顔を上げる。
そうだ。今はまずイリアスが受け取ったサシェを、『呪い』をなんとかしなくてはならない。
「そうなんだ。イリアス。それをオレに渡してほしい。お前が持っていたら危ないんだ」
「危ない? ……俺は聖女様からお守りだって戴いたんだけどな」
「お守りなんかじゃない。それは呪いのアイテムなんだ!」
途端、イリアスの顔が怒りに歪んだ。
「……お前らふたりで共謀して、俺からこれを奪おうとしてんのか?」
「え?」
「は?」
私とザフィーリの声が被った。
そんな私たちの前で、イリアスの顔つきが別人のように変わっていく。
「これは俺が聖女様からもらったもんだ。お前らに渡してたまるかよ!」
その怒声と共に、あの禍々しい黒煙が彼の身体から勢いよく噴き出すのを見た。