男装聖女は冷徹騎士団長に溺愛される

「え? じゃねーよ。また団長から直々に呼び出されてよ。あの後大変だったんだからな。流石の俺ももう庇いきれねーって」
「そ、それは……」

 今はそんな話をしている場合じゃないのに、親友の見たことのない冷たい表情に口が急にうまく動かなくなった。

 はぁ、と大きなため息を吐いて、彼は私から視線を逸らした。

「もう俺、お前のことがわかんなくなってきた」
「イリアス……?」
「友達としてお前のこと信じたいのにさ、お前の方が俺に隠し事してるんじゃ、信じたくても信じられねーよ」

 そんな拒絶の言葉を聞いて、スっと胃のあたりが冷たくなった。
 彼にたくさんの隠し事をしているのは事実で、何も言い訳出来ない。

「ご、ごめん……」

 思わず出ていた小さな謝罪の言葉に、イリアスがもう一度ため息を漏らす。

「謝られてもな……」
「話の途中で悪いけれど、今はそんな場合じゃないのでは?」

 そう私の背後で呆れた声がした。ザフィーリだ。
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