男装聖女は冷徹騎士団長に溺愛される
「補助? トーラに、ですか?」
「そうだ。先ほどもそれでお前の解呪に成功した」
「……っ!」
「わかったら早くお前も行け」
有無を言わせない団長の命令にイリアスは「はい」と答え、私の方を振り返りながらも廊下を駆けて行った。
(怪しまれてるよなぁ……)
やはり、この件がひと段落したらちゃんと説明しよう。
さっき一度覚悟を決めたのだ。
緊張はするけれど、やはりイリアスには全てを話そう。
だって、彼は大切な友達なのだから。
と、ラディスがドンドンと激しくドアを叩き始めた。
「ここを開けろ!」
「うるさい! 誰も入って来るな!」
すぐにそんな甲高い声が返ってきて、ラディスは問答無用でドアに体当たりを始めた。
3度目の体当たりでバキャっという嫌な音と共にドアが向こう側に倒れて行った。
「入って来るなよぉぉーー!」
「!?」
半狂乱となり絶叫を上げている男は両手でナイフを握り締めていてギョッとする。
しかしそんなことはお構い無しにラディスはそいつの元へと近づいていく。
「来るなぁーーー!!」
ナイフをめちゃくちゃに振り回し叫んでいる男の手元に手刀を喰らわせ、ラディスはそのナイフが床に落ちると同時に彼の鳩尾にドカっと一発拳を入れた。
「うぐ……っ」