男装聖女は冷徹騎士団長に溺愛される
(イリアスがザフィーリに謝るなんて……)
ということは、イリアスはザフィーリが部屋に来たことは覚えているのだ。
イリアスが一体どこまで覚えているのか気になった。
ラディスがザフィーリに訊ねる。
「状況は」
「今この部屋の中に立て篭っている者がおります」
「この部屋の者も、お守りをもらったと話していました」
そう後を続けたのはイリアスだ。
すると、近くにいた見習いの男が青ざめた顔で言った。
「お守りの話をしたら、突然これは俺のものだと暴れ出して……」
おそらく同室の奴なのだろう。
「そうか。お前は身体にどこか異変はないか」
「は、はい。私は、何も」
そしてラディスはその場にいる皆に厳しい声で伝えた。
「お前たちは他に同じような者がいないか手分けして探してくれ。動けなくなっている者もいるかもしれん。どちらの場合もその者には極力近づかず、その部屋の前で待機!」
皆一斉に返事をしてバラバラと散っていった。
私は隣にいるイリアスに言う。
「イリアス、お前も他に心当たりのある奴のとこに先に行っててくれ」
「お前は?」
「あー、オレは」
「トーラには俺の補助をしてもらう」
そう答えたのはラディスだ。