男装聖女は冷徹騎士団長に溺愛される
フェリーツィアがそんな気まずい空気を変えるように私に引きつった笑顔を向けた。
「と、とりあえず聖女様、今夜はこのままここで」
「藤花」
「え?」
目を瞬いたフェリーツィアに私は言う。
「聖女様って呼ばれるの、慣れなくて」
……特に、一時でも聖女様だと信じていたフェリーツィアからそう呼ばれるのは、なんだか落ち着かなかった。
「だから私の名前、藤花って呼んで。フェリーツィア」
「藤花……わかった」
フェリーツィアはこくりと頷き、そのまま頭を下げた。
「藤花。改めて、貴女の仲間に酷いことをしてごめんなさい。おばば様はああ仰っていたけれど、貴女の大事な人たちに呪いを掛けたのは私だから」
真摯に謝罪されて、私は小さく息を吐く。
「……すぐに許すことは出来ないけど、事情はわかったから。……私も、さっきは思い切り叩いて、ごめんなさい」
そう謝ると、フェリーツィアは顔を上げてから首を横に振った。
「私だって、村の仲間が同じ目に遭ったらそいつを許さないもの」
それを聞いて、こいつやっぱり怖いなと思った。
でも先ほどまでの怒りは、不思議と消えていた。