男装聖女は冷徹騎士団長に溺愛される
「それでは、私はこの辺りで失礼させていただきましょうかね」
後ろの女性に支えられ、彼女は椅子からゆっくりと立ち上がった。
「今夜はゆっくりとお休みくださいね」
そう言い残しダフニさんは部屋を出ていった。
フェリーツィアとフヌーディの小さな吐息が重なる。
「あんなに元気なおばば、久しぶりに見たな」
「ええ。でも、大丈夫かしら……」
フェリーツィアが心配そうにドアの方を見つめる。
と、フヌーディが私を振り返り首を傾げた。
「聖女様は、やっぱり異世界に帰りたいんだ?」
「え……?」
そうか。
彼らからしたら私のいた世界が「異世界」になるのだ。
「まぁ、俺としては帰ってくれた方がいいけど」
「フヌーディ!?」
フェリーツィアが焦ったように声を上げる。
するとフヌーディはふんと鼻を鳴らした。
「だってそうだろ? 聖女様が騎士になるくらいなら、帰ってもらったほうがいい」
「……」
私は何も返さなかった。
……いや、何も返せなかった。
戦争で行き場を無くしたという彼の意見は最もだと思ったからだ。