男装聖女は冷徹騎士団長に溺愛される
男装聖女と隣国の街 2
結局、いきなり城に乗り込むのはいくらなんでも危険過ぎるとイリアスに散々説得され、まずは山の麓にあるという街で情報収集をすることにした私たち。
その街は城下町だけあってレヴァンタの都と同じくらい栄えているらしいのだけど。
「栄えてる?」
「そう聞いてたんだけどな……」
念のためトーラの姿となった私の問いに、イリアスが自信なさげに答えた。
オレンジ色の瓦屋根と白壁の建物が続く街並みは確かにレヴァンタの都に似て美しかった。
しかし真っ昼間だというのに、メイン通りだろう石畳の通りには人っ子一人いなかった。
見たところ通りに面した飲食店や宿なども全て閉まっているようで、窓すら開いていない。
しんと静まり返ったその姿はまるでゴーストタウンだ。
(まさか、呪いの影響がここにまで……?)
最悪な考えが頭を過ったそのときだ。
「ちょっと、あんたたち!」
そんな潜めたような声が頭上から降ってきた。
見上げると、すぐそこの建物の二階の窓から五十代くらいの女性が顔を覗かせていた。