男装聖女は冷徹騎士団長に溺愛される
男装聖女は秘密を共有する 5
「お待たせ!」
武器庫裏に着くと、壁に凭れていたラディスが身を起こした。
私は息を切らせながら言う。
「また遅くなってごめん! イリアスの奴が、浮かれて仲間呼んで酒飲んで大騒ぎして、やっと寝落ちして出てきたから」
「そんなことだろうと思っていた」
特に怒った様子もなくラディスはこちらに手を差し出してきた。
息を整え、まず元の姿に戻ってからその手に自分の手を乗せる。
「行くよ」
「ああ」
( 飛べ )
ぐんっと引っ張られるようにして、私たちは空へと飛び立った。
「あぁ~、夜風が気持ちいい~」
約2週間ぶりの夜空はやっぱり最高に気持ちが良かった。
今日は月も細くて星が一段と綺麗に見える。
「お前も酒を飲んだのか?」
「え? ああ、まぁ、付き合いで少しだけ。あんまり好きじゃなくて」
向こうの世界の甘いお酒なら好きになれたかもしれないが、こちらの世界の酒は「ザ・酒!」という感じでただ苦いだけで全然美味しくないのだ。
それにすぐに顔が赤くなってしまうのも皆に揶揄われて嫌だった。
今もまだ少し顔が火照っていて、だから夜風がいつも以上に心地よかった。