男装聖女は冷徹騎士団長に溺愛される
男装聖女ともう一人の聖女 1
――いやいやいや、「わかった」じゃないんだわ。
部屋に戻りベッドに潜り込んでから私は頭を抱えた。
(え? なんだ、さっきの。……え、夢? 夢だったのか?)
まだ顔が熱い。
酒はとっくに抜けているはずなのに。
(だって、あんなの反則だろ!)
私が「わかった」と頷いた後の、ラディスの満足そうな笑みを思い出して私は無言で悶絶した。
(あんな笑い方出来るならいつもやれっての!)
普段、怒るかしかめっ面ばかりしている奴の笑顔の破壊力といったらなかった。
まんまとギャップにやられた感がある。
(それにしてもまさか、あのラディスが私のことを好きなんて……ん?)
そこまで考えて、ふと我に返る。
(や、でも別に「好き」とは言われてないな?)
付き合って欲しいとか、恋人になって欲しいなんてことも特に言われてはいない。
ただ、俺以外の奴に触れさせるなと言われただけだ。
(……これから、どうすりゃいいんだ?)