男装聖女は冷徹騎士団長に溺愛される
「トーラ!」
「!?」
いきなりデカい声が上がって隣のベッドに視線を向ける。
イリアスが右手を天井に向かって突き出していた。
「俺、騎士になれたぞ〜〜」
そう叫んだかと思うとパタっとその手はベッドに落ち、すぐにまた規則正しいいびきが聞こえてきた。
「なんだ、寝言かよ」
夢の中でも騎士になれたことを私に報告しているのかと笑みが零れた。
そして、先ほどラディスからイリアスのことを好いているのかと訊かれたことを思い出した。
イリアスに対して恋愛感情は勿論ないが、年上なのになんだか弟のように感じることは多々あった。
一年以上同室で生活しているからか、もう家族のような存在になっているのは確かだ。
(家族か……)
私には本当の意味で家族と呼べる人たちがいない。
両親は私が幼い頃に交通事故でいっぺんに死んでしまった。
二人は駆け落ち同然で一緒になったらしく身寄りがなかった私は中学まで施設で育った。