男装聖女は冷徹騎士団長に溺愛される

 高校にはそれまで剣道で良い成績を修めていたお蔭で特待生として入ることができ、それからは一人暮らしをしていた。
 そんな中でこちらの世界にやってきてしまったのだ。

 私がいなくなって心配してくれる家族はいないが、それでも友達や先生、部活の仲間たちはきっと心配してくれているだろう。
 ひょっとしたら警察沙汰になってしまっているかもしれない。
 早く帰って安心させてあげたいが、現状どうしようもない。
 最近忘れがちだが、早く騎士になって例の聖女について書かれた本を探さなければならない。

(そういえば、ラディスは秘密の書庫のこと知ってるかな?)

 訊いたら教えてくれるだろうか。
 と、そこで大きな欠伸が出てしまった。

(とりあえず、今日はもう寝よ)

 流石に色々あって疲れた。
 明日から二次試験に向けた新たな鍛錬が始まるはずだ。
 諸々は起きたら改めて考えようと目を瞑ると、間もなく私は夢の中へと引きずり込まれた。


< 53 / 215 >

この作品をシェア

pagetop