男装聖女は冷徹騎士団長に溺愛される
男装聖女ともう一人の聖女 2
「あーあ、一目でいいからお姿拝見したかったな~」
向かいに座るイリアスがフォークでサラダをつつきながら不貞腐れたように言った。
――そう。
結局、聖女様と会うことも見ることも叶わなかったのだ。
他にも私たちと同じように噂を聞いて城の周りに集まった連中は揃って先輩騎士に散れと怒鳴られた。
そのまま朝食時間となってしまい、仕方なく皆ぞろぞろと食堂に移動し今に至る。
ちなみに今朝のメニューはオニオングラダンスープに似たパンの入ったさっぱりとしたスープとサラダだ。
「城にいるのは確かなんだし、これから見る機会なんていくらでもあるだろ」
「そうだけどさー」
私だってがっかりした。
でもよく考えたらまだ騎士見習いの私が、漸く見つかって手厚い歓迎を受けているだろう聖女様に会えるわけがないのだ。
2年前、私が聖女として名乗り出ていたら私がその待遇を受けていたわけで、そう思うと少し複雑だった。
(ま、私には今のこの生活の方が性に合ってるけどな)
騎士になれたイリアスの方が早く会えそうだが、城に上がるための騎士の正装などはまだこれから用意するのだろう。
と、頭に浮かんだのは騎士団長のあいつだ。
(ラディスはもう聖女様に会えたのかな……)