男装聖女は冷徹騎士団長に溺愛される
男装聖女は騎士団長に愛される 2
――ひとりの男としてお前に惚れたんだ。
深い緑に見つめられながら、その言葉を何度も心の中で反芻して。
それでなくても高い体温が更に上昇した気がした。
そんな私に彼は言う。
「改めて、お前の気持ちを聞かせて欲しい」
「わ、私は……」
口を開いて、でも、そういえば自分の気持ちを全く考えていなかったことに気づく。
実を言うと、この歳まで好きな人なんて出来たことがなかった。
恋を、したことがなかった。
後輩の女子たちからきゃあきゃあ言われたことはあっても、異性からこんなふうに真剣に告白をされたのなんて、これが初めてで。
でも、今こうして手を握られて、見つめられて、とてもドキドキしている。
第一印象は最悪だったけれど、この数ヶ月の間に彼の印象はがらりと変わった。
冷徹なんて言われているけれど、本当は部下思いの穏やかな性格で、鳥に憧れていたなんて子供っぽいところもあって、そんな彼のことが私は……。
(そっか、好きになってたんだ)
ストン、と心に落ちた。
一緒に空を飛んでいると楽しくて、彼がいないと寂しくて。
聖女様と一緒にいるところを見て胸がざわついたのも、自信がなくなったのも、きっと彼のことを好きになっていたからだ。
自覚して、でも今気付いたばかりで「私も好き」なんて言う勇気はまだなくて。