男装聖女は冷徹騎士団長に溺愛される

「……う、嬉しい」

 ぽつりと、私は小さく答えていた。
 それが今の精一杯だった。
 でも嘘偽りのない、正直な気持ちだ。

 こちらを見つめる緑の瞳が大きく見開かれて、次の瞬間私は温もりに包まれた。

 ――え?

 一瞬、何が起こったのかわからなかった。でも。

「っ!?」

 彼に、ラディスに抱きしめられたのだとわかって、私はその腕の中でギシッと固まった。
 この間イリアスにも抱きつかれたが全然違う。
 自分が今女の身体だからか、体格差を余計に感じた。
 好きだと自覚したばかりでこの距離はダメだ。
 全身の血が沸騰してしまうんじゃないかと思った。

「ありがとう、藤花」

 耳の後ろでそんな嬉しそうな声が聞こえて、ちゃんと気持ちが伝わったのだとわかった。
 そのことにほっとして、でもそこが限界だった。

「……藤花? おい!?」

 ラディスが慌てた声を上げた。
 私がぐったりと彼に体重を預けたからだ。

「大丈夫か!?」
「だい、じょうぶ……」

 なんとかそう答えて、でも心配そうなラディスの顔がぐるぐると回っていた。
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