男装聖女は冷徹騎士団長に溺愛される


 2日ぶりの馬の世話はやっぱり楽しかった。
 先日と同じ作業に加え、今日は馬のブラッシングをすることができた。
 気持ちよさそうな馬を見て、こちらも嬉しくなって丹念にブラッシングしてやった。

 そんなときだ。

「もう、身体はいいのか?」
「へ?」

 振り向くと、ラディスがいた。

「なっ! なんで、こ、こちらに?」

 他の奴の目を気にしながら慌てて訊くと、彼はラディス団長の顔で答えた。

「イェラーキの様子を見に来た」
「あ、ああ」

 イェラーキ。確かラディスの愛馬の名だ。
 こことは別の場所にいるとは聞いているけれど。

「それで、身体は」
「あ、もう大丈夫です! ご心配おかけしました!」

 そう言ってガバッと頭を下げる。

「それならよし」

 そう言って背を向けたラディスに、私は思い切って声を掛けた。

「あ、あの!」
「なんだ」
「……イェラーキ、オレも見てもいいですか?」

 ラディスはちょっと眉を寄せたけれど、再び背を向けながら小さく言った。

「……ついて来い」
「あ、ありがとうございます!」

 あのとき乗ったカッコイイ馬にまた会える。
 私の心は踊った。


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