男装聖女は冷徹騎士団長に溺愛される
男装聖女は騎士団長に愛される 4
その厩舎は先ほどの厩舎に比べると小さかったが、どことなく高級感があった。
ちなみにここに来るまでの間、他の見習いたちが羨ましげにこちらを見ていたが「俺も」と団長に声をかける勇気のある者はいないようだった。
ちょっと申し訳ない気もしたが、イェラーキに会いたい気持ちのほうが勝ってしまった。
厩舎の中に入ってすぐに、ラディスが声を上げた。
「イェラーキ、来たぞ」
すると、中にいたその立派な黒い馬は嬉しそうに前脚で地面を掻いて鼻を鳴らした。
やっぱり特別凛々しくカッコ良くて私は入口に立ったまま見惚れてしまった。
しっかりとお世話されているのだろう、黒の毛並みがピカピカと光っている。
(2年前、あの子に乗ったんだよな)
なのに、ほとんど覚えていないことが悔しかった。
イェラーキを撫でていたラディスがそんな私の方を振り返った。
「入ってこないのか」
「えっと、オレが近づいても平気ですか?」
近づけるのはラディスだけだと先日先輩が言っていたのを思い出したのだ。