男装聖女は冷徹騎士団長に溺愛される
と、ラディスは言った。
「また機会かあれば乗せてやる。こいつも喜ぶだろう」
「! うん!」
そんな機会がいつ巡ってくるかわからないけれど、私は大きく頷いていた。
「……今夜、抜けられるか?」
「え?」
「まだやめておくか。病み上がりだものな」
空へのお誘いだとわかって、私は首を横に振る。
「いや、こっちも丁度話したいことがあったんだ」
するとラディスは心なしか嬉しそうに微笑んだ。
そんな、普通はなかなか見ることができないだろう彼の特別な顔にぽっと心があたたかくなった。
「もう行け。皆が不審がる」
「そうだな、わかった。またな、イェラーキ!」
そうして私はイェラーキとラディスに手を振りその厩舎を出た。