男装聖女は冷徹騎士団長に溺愛される

男装聖女は騎士団長に愛される 5


 イリアスがいびきをかき始めてからこっそりと部屋を抜け出し、少しの緊張を覚えながら武器庫裏へ行くと、先に来ていたラディスが私を見て優しく目を細めた。
 つい先日いくら待っても彼が現れなかったことを思い出し、その姿を見ただけでぽっと灯がともったように心が温かくなった。

「お待たせ」
「いや」

 そんな会話も、なんだかデートの待ち合わせのようだと思ってしまった。
 でも、ラディスがこちらに近づいてくるとやっぱりドキドキと胸の鼓動が早くなるのを感じた。

(まずいな、こんなになるもんなのか?)

 正直、これまで少女漫画によくある「ドキドキ」とか「トクン」とか、そういう擬音は大袈裟な誇張表現だと思っていた。
 剣道の試合前や騎士の昇級試験前も勿論緊張はするけれど、それとは全然違う。
 この間の胸のざわめきといい、まさか自分の胸がこんなにも騒がしくなるなんて思いもしなかった。
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