男装聖女は冷徹騎士団長に溺愛される
 私は、ラディスにしっかりと抱えられていたのだ。

(こ、これって、噂の『お姫様だっこ』ってやつ……!?)

 勿論初めての体験であるし、自分の人生においてお姫様だっこなんて絶対に縁のないものだと思っていた。

(か、勘弁してくれーー!)

 昨日抱きしめられたときもそうだったけれど、今この距離はマズイ!
 ラディスの温もりが、密着した逞しい胸や腕から伝わってくる。
 私の胸はドキドキを通り越してもうバクバク、このまま爆発してしまうんじゃないかと思うほどだ。

 そんな私の動揺を知ってか知らずか、ラディスは平然と続ける。

「どこかが触れ合っていればいいと思うのだが。それに、この方がお前の負担が少ないだろう」

 身体の負担は確かに少ないかもしれないが、心の方の負担がデカすぎる!
 でも「ドキドキするから嫌だ」なんて、そんな恥ずかしいこと言えるわけがない。
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