男装聖女は冷徹騎士団長に溺愛される
「で、でも、お、重いだろ!?」
「俺を誰だと思っている。むしろ、2年前にも思ったがお前はもっと食ったほうがいい」
「……2年前?」
急に2年前の話が出てきて頭に疑問符が浮かぶ。……なんだか嫌な予感がした。
「イェラーキにお前を乗せたときだ。あまりの軽さに不安になったほどだ」
「!?」
そのとき、すっかり抜け落ちていた記憶がふいに蘇った。
てっきり引っ張り上げてくれたものと思い込んでいたが、違う。
ラディスは座り込んで泣きじゃくっていた私の脇腹を掴んで子供のように抱え上げ、自分よりも先にイェラーキの背に乗せてくれたのだ。
しかし私のことだ。その間ただ大人しくしていたとは思えない。きっとめちゃくちゃに抵抗したはずだ。
だから「一苦労だった」とラディスも言っていたではないか。
(ああああ思い出したくなかった~~!)