宗主国の皇女は、属国で幸せを見つける
そんな感じで夫婦とは名ばかりの
ビジネスパートナーに近い2人だったが、
慣習として朝食の席は共にしていた。
といってもほとんど無言だが。

「陛下、おはようございます。遅くなって申し訳ございません。」
先に朝食の席についていたオルランドに
フィロメナは短く挨拶する。
別にオルランドはフィロメナを待っていたわけでも無い。
すでに彼は朝食のプレートに手をつけていたし、
コーヒーをすする口を止めてフィロメナを一瞥し、
こくんと頷いただけだった。
フィロメナも特に会話を広げるわけでもなく、
もくもくと朝食を食べ進めた。

「王妃さまは本日はどのようにお過ごしですか?」
無言のオルランドに代わって
フィロメナに話しかけるのは
オルランドの側近レナートである。
彼は国王と王妃の取次役でもあった。
「今日は特に予定がないので部屋で過ごそうと思います。もちろん、夜の予定は承知していますよ。」
「そうですか。ではよろしくお願いしますね。」
レナートが自分の予定を確認したのは、
今日の夜に国王主催の晩餐会があるからだ。
貿易の主要拠点をもつアルドレイン王国は
頻繁に各国の大使などが訪れるので
頻繁に晩餐会や歓迎パーティーが催される。
数ある公務の中で
フィロメナが最も苦手とするものだ。


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