宗主国の皇女は、属国で幸せを見つける
非公式のお茶会や昼餐会であれば、
王太后やサレハ王女が仕切るので
フィロメナはノータッチでいられたが、
国王主催の晩餐会やパーティーの場合、話は別だ。
主催者の妻が出ないわけにはいかない。
相変わらず壁の花なのにもかかわらず。

朝食を終えて部屋に戻り、
今日のために用意したドレスを手にとって
フィロメナは深いため息を着いた。
今日用意したのは焦げ茶色のロングスリーブドレスだ。
首の部分と腕の部分は
薄いシアー素材でできており、
暑苦しくならないように配慮されている。
丁寧に縫製された上等な品だ。
でも、フィロメナの好みかと言われると違う。
フィロメナはピンクやオレンジ、黄色といった
明るい色が好きなのだから。
(これはお仕事服なの。私の好き嫌いとは関係ないのよ。)
フィロメナはそう何度も心の中でつぶやく。
王太后から「趣味がババくさい」
とお小言をもらうだろうが
いつもの鉄の微笑でやり過ごそう。

フィロメナが晩餐会を嫌う理由はもう一つ。
招待客からのセクハラが原因だ。
隣にオルランドが常にいれば
フィロメナを守ってくれるだろうが、
オルランドがフィロメナに構うことはほぼない。
最初は畏まっていたゲストたちも
酒が入ると陽気になってくる。
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