欲望のシーツに沈む夜~50のベッドの記憶~
シーツの中、静寂の中にふたりの呼吸だけが溶け合っていた。

まだ余熱を残した身体を抱きしめるようにして、一ノ瀬課長は私の髪を指でゆっくり梳いていた。

「……大丈夫?」

低く優しい声が、耳元に触れる。

私はこくりと頷いて、彼の胸に顔を寄せた。

その鼓動が、自分のそれとぴたりと重なっているような気がして、ふっと笑みが漏れる。

「まさか、こんなふうになるなんて思ってませんでした。」

私が呟くと、彼は「俺は……」と一瞬言葉を切ってから、そっと言った。

「ずっとこうしたかった。君に触れたくて、でも壊したくなくて。」

その言葉が、本当の温度を持って胸に染み込んでいく。

「……一夜で終わらせたくない。」

「はい!」

私の返事に、彼はようやく安心したように、優しく私の額にキスを落とした。

きっと、始まったばかり。

この関係は、夜が明けても続いていく。

私は目を閉じながら、彼の体温に身を委ねた。
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