欲望のシーツに沈む夜~50のベッドの記憶~
タクシーに乗るまで、何も話さなかった。

ただ手だけが、しっかりとつながれていた。

彼の部屋は、シンプルで清潔だった。

靴を脱いだ途端、ふわりと抱き寄せられる。

「ずっと、触れたかった。」

囁くような声とともに、唇が重なった。

深く、熱く、求めるように。

キスひとつで、私はもう動けなかった。

その舌が触れるたび、心が、身体が、彼に染まっていく。

ソファに押し倒され、彼の手が服の隙間に滑り込む。

「我慢してたんです、ずっと。……今日で、終わりにします。」

シャツのボタンが外され、ブラウスの中に彼の熱い手のひらが這う。

指先が触れるたび、私の声が震えた。

「部長の全部……俺だけにください。」

その言葉に、抗う力はもう残っていなかった。

忠犬だと思っていた彼が、こんなにもオスのように情熱的だったなんて――

知らなかった。
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