欲望のシーツに沈む夜~50のベッドの記憶~
4、酔ったふりで、彼を誘った夜

仕事帰りのワインと揺れる視線

今日は月末ということで、営業チーム全員での打ち上げ飲み会だった。

月の最終日まで走り抜けたご褒美のような夜。なのに、私はどこか落ち着かない。

私の隣には、片瀬悠くん。

私よりも4歳年下だけど、営業成績はいつもトップクラス。

チーフである私にとって、間違いなく頼れる存在。

だけど――やけに距離を保ってくる男でもある。

「佐伯チーフ、飲まないんですか?」

「……飲んではいるよ」

グラスに残ったハイボールを揺らしながら答える。

本当は、もっと飲める。いつもなら気を遣うこともなく、それなりに盛り上がれるはずなのに――今日は違った。

なぜか、片瀬くんの隣ではお酒が進まない。

彼の視線、声のトーン、グラスを持つ手の仕草。

すべてが妙に気になって、胸の奥がざわつく。

もしかして私、酔ってるのはお酒じゃなくて――

彼に、なのかもしれない。

< 28 / 55 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop