欲望のシーツに沈む夜~50のベッドの記憶~
「あのさ、これからも……同僚として——」

そう切り出そうとした瞬間、運転席の彼が遮った。

「もう、同僚じゃない」

低く落ち着いた声。横顔すら見惚れるほどかっこよくて、言葉が詰まる。

「……好きな女、一度抱いたら。同僚には戻れないでしょ?」

はっきり言われたその言葉に、胸の奥がざわついた。

「……はっきり言って、困るよ。片瀬君」

「うん。困らせる気しかないよ、俺」

いたずらっぽく笑いながらも、その目はどこまでも真剣だった。

やがて車が赤信号で停まり、片瀬君が私の方を向いた。

「玲奈さん。……俺の彼女になってください」

まっすぐに、まるで営業先にプレゼンをかける時よりも真剣な目で。

昨日まで、ただの同僚だった彼が、こんな風に恋を仕掛けてくるなんて。

車のエンジンの音だけが響く中、私はそっと頷いた。

この恋は、もう“過ち”じゃない。

これからも続いていく恋になる。
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