欲望のシーツに沈む夜~50のベッドの記憶~
蓮の家は、駅から本当にすぐだった。

「入って入って。」

気さくな声に促されて玄関をくぐると、シンプルで片付いた部屋が広がっていた。

無駄な装飾はなく、隅に置かれた大きなベッドだけが、妙に目に入る。

「これ、Tシャツ。着替えに。」

差し出されたのは、彼が普段着ているであろうゆるめの白いTシャツ。

——蓮の匂いがした。柔軟剤と、少しだけ大人の香水のような。

「適当に寝てていいよ。」

そう言ってベッドの方を指差す蓮。私は慌てて首を横に振った。

「えっ、蓮は? ソファで寝るの?」

「うん。まあ、そうなるよね」

笑ってはいたけれど、私はなんとなく心苦しくなる。

「……でもさ。」

蓮がふいにベッドへ近づいてきた。

「女の子をソファで寝せるなんて、俺にはできないよ。」

そう言って、優しい手つきで私をベッドに導いて、そっと横たえた。

——鼓動が、速くなる。

さっきまで飲み会で笑っていた幼馴染が、今、こんなに近くにいる。
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