私の中にあるモノ
更に、山口教授は興味深いことを言った。

「それに君、竜人の成功検体の中では、かなり優秀な個体なんだよ?」

「…どういう意味?」

しょっちゅう記憶をなくしてるのに、私が優秀?

とても、そんな風には…。

「だって、君のシンクロ率は最低でも、750…。最大では850を記録したことがあるんだ」

山口教授は、ファイルを捲りながらそう言った。

…。

「…何なの?シンクロ率って」

「君の中の竜としての部分と、人としての部分が、互いにどれほどシンクロしてるか表してる。竜人研究所で、独自に使われている数値データだよ」

山口教授は、私のデータが記録されたファイルを、こちらに見せてくれた。

そこには、私が生まれてから、最近に至るまでの、私のシンクロ率の推移が記録されていた。

…本当だ。

私のシンクロ率は、ほとんどいつも、800前後をキープしている。

一番低い時でも、700はある。

それからは、少しずつだけど、ずっと上り坂。

「他の成功検体は…シンクロ率はどれくらいなの?」

「高くて800。個体によって差あるけど…。大抵は500〜700くらいかな」

成程。

じゃあ、私の場合は…生まれた直後から、かなり高いシンクロ率だったのね。

そして…。

「最高が880…。…この記録って…」

「この記録は、1週間前に測定したもの。…君が記憶を失う直前に行った測定した記録だよ」

「…」

…そういうことか。

篠森さんが言ってた。シンクロ率が上がってきてたのに、って。

私のシンクロ率…。折角上がってきたところだったのに、その矢先に記憶喪失になって…。

「今、測定したら…こんなに高い数値は出せないよね」

「うーん、多分ね。これまでも…記憶を失った後にシンクロ率を測定したら、かなり下がってたから」

「…そう…」

「一応、測ってみる?」

山口教授は、引き出しから注射器を取り出した。

「どうやって測るの?」

「君の血をちょいっと、試験管一本分くらいもらうだけ」

あぁ、そう。採血なのね。

「…分かった。良いよ」

「じゃ、ちょっともらうねー」

診察室みたいだと思ったら、やることも病院と同じなのね。

…良いよ。血を採るくらい。

山口教授は慣れた手つきで、私が差し出した腕に針を突き刺し。

そこから、私の血液を採取した。

私はじっと、自分の身体から吸い上げられる血液を見つめていた。

…竜の血が混ざっていても、赤いのね。

血の色だけ見ると、普通の人間とまったく変わらない…。

「はい、採取完了、っと」

「…それで、シンクロ率は?」

「まだ分からないよ。結果が出るまで…半日くらいかかるかな」

そう。じゃあ、待ちましょうか。

多分、相当下がってると思うけど…。

「それじゃ、待ってる間に…訓練室、見てきたら?」

と、山口教授が提案した。

…篠森さんが言ってた。この施設の1階と2階は、訓練室があるって。

そこのことね。

「他の成功検体達も、そこにいるはずだよ」

「…彼らは、私のことを覚えてると思う?」

「もちろん。記憶喪失は君だけだからね」

そうよね。

私が忘れても、他の竜人達は、私のことを覚えている。

ならば、私の知らない私のことを、彼らが教えてくれるかもしれない。
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