私の中にあるモノ
「ただのデータの一つに過ぎなくても…迫ってくる寿命に苦しめられていても…。私達は生きてる。確かに…今、この瞬間に生きてるんだ」

生きているこの瞬間を、積み重ねて。

1秒でも長く生きようと、必死に足掻いている。

そんな私達の生き様を…笑いながら話すなんて。

同族達の命を侮辱することだけは、絶対に許せない。

「…私達を…竜を…馬鹿にしないで」

尊き血を持つ竜なら、決してそんな真似はしなかったはずだ。

人間だけだ。

人間だけが、命を嘲笑う。

自分達も、同じようにこの世界に生きている命の一つなのに…。

「…それは悪かったね」

山口は、胸ぐらを掴む私の手を、そっと振りほどいた。

「馬鹿にしてるつもりはない。…君達の命は、いつもちゃんと尊敬してるし、尊重してるつもりだよ」

「…」

つもり、つもり、って…。

「…山口、あなたは…」

「さてと、俺はこの件の事後処理に向かわなくては」

山口は双眼鏡を、白衣のポケットにしまった。

「じゃ。皆宮も部屋に戻ると良い。明日は訓練、休んでも良いよ」

「山口…!待って、まだ…」

話は終わってない。

それなのに、山口はそれ以上、私に何も言わず。

踵を返して、反対方向に歩き去ってしまった。

「…」

…武藤くん。芦田さん、ムダナちゃん。

そして、脱走に参加した、他の同族のみんな。

「…ごめんね」

消えてしまった尊い命に、私はそんな慰めにもならない言葉を手向けることしか出来なかった。
< 49 / 105 >

この作品をシェア

pagetop