私の中にあるモノ
だけど残念ながら、私の記憶喪失を治す方法は、今のところ見つかっていないという。

結局は、私が自分の努力で思い出すか。

そして、二度と忘れないように努力するしかないのだ。

…記憶喪失の予防なんて、何をどうしたら予防出来るのか、さっぱり分からないけど。

「…記憶の戻し方は分からないけど」

と、山口が話し始めた。

「君が何度も記憶を失ってしまう現象について、ここ最近、俺なりに色々と考えてたんだよね」

デスクチェアの背もたれに、背中を預けて。

腕を組んで、足も組んで、偉そうな姿勢のまま。

山口は、とうとうと自分の考えを語った。

「君の記憶喪失の原因について、あれこれ考えて、仮説を重ねて…。一つ気づいたことがある」

「…それは何なの?」

「まぁまぁ、焦らず。順序立てて話してるんだから、急かさずに聞いてくれよ」

…ちっ。

心の中で舌打ちをして、私は黙って山口の話を聞くことにした。

「不満そうな顔だね…。まぁ良いや、じゃあ続きを話そう」

早くして頂戴。

「君はこれまで5回、記憶を失った。一番最初は、君が6歳の時。これより以前に、記憶を失ったことは一度もない。…まぁ覚えてないと思うけど」

そうね。

5回も記憶を失ってるんだから、「一番最初の記憶」なんて…覚えているはずがない。

自分が6歳の頃の姿なんて…想像も出来ない。

「そして、最初の記憶喪失の後…。2回目の記憶喪失は、8歳の時だった」

これも、もちろん覚えていない。

「その次は13歳、その次は14歳で…。君が生まれて15年目の今年、5回目の記憶喪失が起きた」

「…13歳の時から、私は毎年記憶をなくしてるってこと?」

「そうだね」

「…」

…どうして?

その理屈で言うと、私、また来年にも記憶喪失が起こる可能性が高い、よね?

…そんな。

忘れたくないこと…たくさんある、のに。

「…とはいえ、俺が気になってるのは、記憶喪失になった年齢…じゃないんだよね」

「…どういうこと?」

「これを見て」

山口教授は、私に1枚のレポートを差し出した。

そこには、私が記憶をなくした直前のシンクロ率と、直後のシンクロ率が並べて記録されていた。

《『age6 記憶喪失直前シンクロ率810ー直後シンクロ率750』

『age8 記憶喪失直前シンクロ率820ー直後シンクロ率740』

『age13 記憶喪失直前シンクロ率840ー直後シンクロ率720』

『age14 記憶喪失直前シンクロ率860ー直後シンクロ率730』

『age15 記憶喪失直前シンクロ率880ー直後シンクロ率720』》

一番下の15歳の記録が、今の…5回目の記憶喪失時の私だ。

「…これ…」

「面白いでしょ?…君の記憶喪失には、ある種の法則性があるんだ」

山口は、何故か得意げにそう言った。
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