私の中にあるモノ
なんでなんだろう。…なんで、こんなに怖いんだろう。

暗闇が怖いんじゃない。大人に見つかって、怒られることが怖いんじゃない。

この先に待ち受けている未知の「何か」を、私は恐れていた。

それが何であるか、分からないはずなのに。

…きっと、私以外のみんなも同じ気持ちだったのだろう。

「…ねぇ、やっぱりやめよう」

ついに。

堪えきれなくなった一人が、そう口にした。

今度は、もう「臆病」だとか、「怖がり」だとは、誰も言わなかった。

むしろ、誰かがそう言い出すのを待っていたようで。

「そ、そうだね…。…やめよう」

「み…見つかったら、大変だもんね」

「もう部屋に戻ろう…」

一人が「やめよう」と言ったのを皮切りに。

子供達は、次々にそう言って、踵を返した。

一刻も早く、この「危険」な場所を去り。

安全な、自分の部屋に戻りたい。

みんなそう思っていた。私も…同じ気持ち、の、はずだった。

一緒に来た子供達は、逃げるように階段を降りていった。

…だけど、私は行かなかった。

「…」

他の子達が、階段を駆け下りる足音を聞きながら。

私だけは、6階の部屋の扉の前に、一人で立ち尽くしていた。

…一人で。

その一人残った少女こそが、6歳の頃の私。

まだ、一度も記憶を失ったことのない…皆宮ムリカ。

この瞬間こそが、私の運命の分岐点だった。
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