聖女の愛した花園


 * * *

 京都に本家を構える姫宮一族には、古くからある呪いがある。それは男児が生まれないこと。旧華族の末裔で呉服屋を営んでいた姫宮家は、何故か男児に恵まれず長女が婿を取って代々家を守ってきた。元々迷信深い一族だったため、女児しか生まれない呪いはある時から誉れとなった。美しく聡明で健康的な女性こそ、姫宮を継ぐに相応しい後継者となるのだ。だから皆立派な婿を取って跡取りとなる女児を産むことに躍起になっていた。

 とはいえ女系一族の姫宮にも男児が生まれることもある。しかし生まれて間もなくして死亡したり、男児を産んだ直後に母親が亡くなったりと不幸が続いた。またある時には男児が生まれた日に大きな地震が起こったり――いつしか姫宮に生まれた男は災いをもたらす存在と言われるようになる。男は姫宮にとって呪いなのだ。

 私の母は三姉妹の長女であり、本家の跡取りとなるはずだった。しかし男女の双子を産んでしまったことにより、母の人生は一転する。迷信深いこの一族は、双子が忌み子と言われていたことを今も信じている。その上に男の子を産んでしまったのだから、当主であった祖母は信じられないと母を突き放した。祖母は自分の跡取りに次女を選び、母のことは本家から追い出した。

 実家から追い出された母は姉ばかりを可愛がり、私のことは存在しないものと扱った。母の目に私は映っていない、母にとって私は呪いそのものだったから。


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