聖女の愛した花園
その分父は私に二人分以上の愛情を注いでくれた。いつも独りぼっちの私を優しく抱きしめてくれた。
「ごめんな……姫宮から離れれば、母さんは正気になるはずなんだ。もう少しだけ辛抱してくれ」
だが呪いからは逃れられなかった。六歳の時、父と姉が交通事故で亡くなった。運転していたのは高齢者でブレーキとアクセルを踏み間違え、父と姉に突っ込んでいったのだという。
母は私に駆け寄ってきた。初めて私の目を見て母はこう叫んだ。
「渚、渚! ああ、あなたが無事でよかった……っ。あの人が、お父さんが亡くなってしまったの……!」
渚は姉の名前だった。
「でも渚は無事でよかった。私のかわいい娘、あなたは私から離れないで」
母は私のことを姉だと思い込んでいた。私は何も言えず、泣き叫ぶ母に抱きしめられていた。最愛の父を失ったことも、母の目に自分が映らないことも悲しかった。声が枯れるまで大声で泣き叫んだ。
母と私は東京に引っ越し、遠縁の姫宮家に身を寄せることになった。母は私を女の子として育てた。姉だと思い込んでいるのだから当然だが。
「髪は伸ばして綺麗に整えましょうね。女の子らしく」