聖女の愛した花園


「あっ!」

 急に筒見さんが声をあげる。

「そういえば、夜に渚さまとすれ違ったことがありましたよね? 白百合寮の方で……」
「……」

 尚も黙り続ける姫宮さまに私は畳み掛ける。

「答えてください! あなたは、本当に女性ですか?」

 姫宮さまは喉元に触れていた手を下ろす。その喉には微かに喉仏が見えた。

「――透はすごいな。意外とばれないと思ってたのに」
「渚、その声……!」

 笠吹さまが驚くのも無理はない、姫宮さまの口から出た声はいつもよりかなり低く野太さのある声だったのだから。

「喉仏が目立たない方だから案外いけてると思ってたんだけどね」
「やっぱりあなたは――、」
「うん、私は男だよ」

 濡羽色の長い髪が揺れる。クールな美人だと思っていた彼女――いや彼は、途端に雄々しさを纏っていた。

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