聖女の愛した花園
元々顔つきが童顔だったからか、女の子の格好をしていると誰も男だとは思われなかった。最初は親戚にも女だとばれておらず、男だと知られると驚愕された。
姫宮本家と縁遠いため一般的な感覚を持つ親戚たちは、私のことを女として育てる母のことが理解できずに母を問い詰めた。
「渚ちゃんは男の子だろう? どうして女の子の格好をさせているんだ? 本人が望んでいるのか?」
母は平然と答えた。
「渚は私の娘です。あなたたちこそ何を言っているのですか?」
精神的病を患っていると考えた遠縁たちは、母を精神科病院に診せようとしたが母は激しく抵抗した。
「私は病気なんかじゃない! 渚は私の娘よ! 私から渚を奪わないで!」
母の精神が正常でないことは幼いながらに理解していた。男女の双子を産み、跡取りを奪われた日から母は狂ってしまっている。私なんかを産んだせいで。
「お母さん、心配しないで。渚はここにいるから」
「渚……!」
母に呪いをかけた私にできることは、娘として母の傍にいること。母が愛した姉・渚として生きることが母にしてあげられる唯一のことなのだ。この世界のどこにも“僕”がいなくても。