聖女の愛した花園
さゆりは同じ弓道部に所属しているのでそれなりに話す方だった。袴姿で弓を構えるさゆりは、凛とした美しさがある。普段から何をしていても綺麗だが、弓を射る姿は普段とは違うしなやかな美しさが感じられる。私は彼女のそんな横顔を見ているのが密かに好きだった。
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「渚、姫宮本家に帰るわよ」
ある日、母から突然電話がかかってきた。どうやら本家の前当主である祖母が亡くなったらしい。私は母とともに通夜と葬儀に参列するため、久しぶりに京都に帰った。母のことを追い出した実家だが、流石にこの時ばかりは迎え入れられた。
通夜と葬儀はしめやかに行われたが、その後が地獄だった。現当主は次女の叔母だが、叔母には子どもがいない。三女の叔母は嫁入りして姫宮家を出たため家を継ぐ資格を放棄している。
つまり、姫宮には次の跡取りがいないのだ。祖母の遺言には「姫宮の血を受け継ぐ女でなければ跡取りとは断じて認めず財産も渡さない」と書かれていたため、大荒れだった。そんな中で母がいった。
「跡取りは渚がなるべきよ」
これに対して叔母は憤慨した。
「今更何を言ってるの? 今更姉さんが本家に口出す資格なんてないわ」
「でも姫宮の血を受け継ぐ女子は渚しかいないのよ」
その場がシンと静まり返る。この場にいる全員が私のことを知っている。