聖女の愛した花園
「姉さん……まだそんなことを言ってるの? 渚は死んだじゃない!」
「馬鹿なこと言わないで! 渚は生きてる! 目の前にいるじゃないっ」
――ああ、やっぱりダメなんだ。
十年経ってもしかして大丈夫かもしれないと思ったこともあったが、甘かった。母は未だに姉の死を受け入れることができない。
「渚は生きてる! 私の娘よっ!」
「母さん」
私は母の手を握りしめた。
「帰ろう」
「渚……っ」
母はボロボロと涙をこぼし、泣きじゃくりながら私に抱きつく。何度も何度も「渚、渚」とうわ言のように呟きながら。
「すみません、母は連れて帰ります」
「お待ちなさい。あなた、本当にそれでいいの?」
叔母は私の目を真っ直ぐ見つめた。
「……いいんです」
私は力なく笑うしかなかった。私にはどうすることもできない。こんな母を一人にしておけるわけがないのだから、自分を殺すしかない。そうしないと私は存在できないのだから。
だがこれからどうすればいいのだろう。仮に私が姫宮を継ぐことになったとして、それは女として生きることの終わりとなる。何故なら結局私の次の跡を継ぐ者がいないからだ。私には子を成すことは不可能なのだから。即ち母に現実を突きつけることになるのだが――今度こそ母の心は壊れてしまうかもしれない。