聖女の愛した花園
気が重くなりながら学院に復帰し、唐突に思いついた。自分が次の跡取りをつくれば良いのではないか? 私が子どもを誰かに産ませることは可能なのだから。しかもここは選りすぐりの令嬢たちが集う花園だ。相手など選び放題ではないか。
何とか体型を誤魔化してはきたものの、最近は自分の手を見る度に大きくて骨ばった手の甲は少女たちのものとは違うと感じさせられる。そろそろ限界だと思っていた。ならばせめて、母のために跡取りとなり得る女児をつくるしかない。我ながら酷い考えだという自覚はあったが、自分には時間がない。迷っている暇などないと思った。
「渚、どうしたの? 相談したいことがあるって」
私はその日、密かにさゆりを呼び出した。相手を決めるならさゆりしかいないと思った。由緒ある白雪財閥の一人娘にして、全生徒が憧れる完璧なマドンナ。誰よりも美しく不思議な魅力を持つさゆりなら、きっと姫宮に相応しい女児を産んでくれるに違いない――。
「先日はおばあさまのお葬式だったそうね。ご冥福をお祈りします」
「ありがとう。久々に祖母の家に行って、ちょっと気疲れてしてしまったみたいで」
私はさゆりの肩に頭を寄せる。そんな私の頭をさゆりは優しく撫でた。
「わかるわ。悲しいけれど、少し息苦しい気持ち」
「さゆり……」
「お疲れ様、渚」
聖女のように微笑むさゆりを見て罪悪感で心が痛む。だがもう覚悟は決めた。