聖女の愛した花園


「明日は課外授業なのよね。あなたは行くの?」
「いや残るつもりだよ」
「じゃあ明日も会える?」
「うん、会いに行く」
「だったら十五時頃に来て」
「十五時? わかった」
「それからね」

 さゆりが手招きするので顔を寄せると、耳元で囁いた。

「――ごめんね?」

 えっ、と思ってさゆりの顔を見た。さゆりは何とも言えない微笑みを浮かべていた。

「どういうこと?」
「明日ちゃんと話すから」

 さゆりがそう言うので仕方なくその日は帰った。それが最後に見たさゆりの姿だった。

 翌日誰もいなくなっただろうことを確認し、白百合寮に向かった。十五時と言われていたのに三十分も早く来てしまったのは、さゆりの言っていたことがどうしても気になったからだ。
 さゆりの部屋のドアは少しだけ開いていた。「さゆり」と呼びかけてみたが返事がなかった。もしかして部屋から出ているのかもしれない。たまにストールを巻いて体型を隠して部屋から出ると言っていたので、今もそうなのだろうと思った。中には入らずに出直すことにした。そして佳乃子の悲鳴を聞きつけ、あの惨状を目撃したのだった――。

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