聖女の愛した花園
*
「……本当にあなたが、子どもの父親なんですか」
全てを話し終えた自分に対し、透が呟く。唇はワナワナと震えていた。
「あなたがさゆりお姉さまをっ!」
「違う! 私じゃない!」
「お姉さまを穢したことに変わりはない!」
透は私に向かって掴みかかる。これまでずっと冷静さを保ち、率先して捜査と推理を行っていたが感情的になって怒りを露わにさせていた。私は何も言えなかった。
「どうして真っ先に名乗り出なかったの?」
「……」
「自分が父親だって言えなかったのは、あなたが殺したからなんじゃないの?」
「……違う」
「何が違うのよ!」
「……こわかったんだ。さゆりが亡くなっていたことも、いるはずの赤ちゃんがいなかったことも、自分が男だとばれることも」
自分で口にしておきながら、あまりにも身勝手で情けなくて吐き気がする。あの現場を目撃して真っ先に思ったことは、愛する人を失った悲しみよりも自分自身の正体が暴かれることへの恐怖心だった。
さゆりと子どもを何があっても守ると誓ったはずなのに、この場から逃げたいと思ってしまった。どうしたらここから逃げられるのか、どうしたら自分が男とばれずに済むのか。そればかり考えてしまっていた。