聖女の愛した花園
どくん、と心臓が大きく脈打つ。佳乃子の手に握られていたのは、ナイフだった。
「あの方を誑かした上にその身を穢して辱めた――あなたさえいなければ、あの方はずっと私だけのものだったのに」
彼女の瞳には狂気が孕んでいた。直後、握りしめていたナイフが振り上げられる。その鋭い刃が自分に向かって振り下ろされるとわかっていたはずなのに、一歩も動けなかった。
「――そこまでよ」
その瞬間、わずかに佳乃子の動きが止まった。一瞬の隙を見逃さず、透は佳乃子の腕をはたき落としてナイフを奪う。
「うう……っ」
「やっぱりあなたが犯人だったんですね――佳乃子さん」
透の瞳が鋭く細められる。私はただ立ち尽くし、崩れ落ちて泣き叫ぶ佳乃子を見つめることしかできなかった。