聖女の愛した花園


「そう。少しでもご回復に向かわれたら良いのだけど――私にできることがあれば、なんでも言ってね」

 そう言って私の手を握り締めてくださるさゆりさま、なんてお優しいのでしょう。いつも私を気遣い、慈悲深いお言葉をかけてくださるお美しい方。
 ですが両親が目を覚ましたら、さゆりさまは私の傍から離れてしまうのでしょう。そもそも私に声をかけてくださったのは、私の身の上を憐れんでくださったから。もし両親が目覚めたらきっと喜んでくださるけれど、今までのように私だけを心配してくださらなくなる。
 それならばもう、目覚めなくてもいい――私にはさゆりさまさえいてくだされば、他に何もいりません。

 *

 笠吹さんとは結局仲違いをしたのか、今では白百合寮と黒薔薇寮を代表するライバル同士となっていました。さゆりさまは特にお変わりないけれど、笠吹さんは何かとさゆりさまに突っかかります。ですがさゆりさまを映す青い瞳に、敵対心ではない別の特別な感情が宿っていることに気づいていました。だからといってどうということはありませんが。彼女に曝け出すつもりがないなら、さゆりさまにとっての特別が私であることに変わりありません。


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