聖女の愛した花園


 さゆりさまのお腹に赤ちゃんがいる? 妊娠しているということ?
 そんなこと、あり得るはずがない。だってさゆりさまは女神なんですもの。懐妊するなんてそんな馬鹿なこと、あり得ないに決まっている。
 そのとき私の脳裏にある言葉が過ぎりました。

「あはっ、そうか。そうだったのですね!」

 さゆりさまは処女受胎なさったんだ。処女でありながら神の子をその身に宿した聖母マリアのように。さゆりさまは本物の聖女様になったんだ!

「処女受胎なさったのですよね? さゆりさま」
「えっ」
「だってそうでしょう? それしか考えられません」
「……違うわ。このお腹の子は、私の大切な彼との子よ」

 さゆりさまは愛おしそうにお腹を撫でる。

「今は彼のことは話せないけど、ちゃんと佳乃子には紹介したいと思ってる」
「な、何を言っているのですか」

 彼って誰? そんなひと、存在しない。私は知らない。だってさゆりさまは聖女だもの。完璧で崇高なる女神様なの。だから、あり得ない。

「私のことからかっているんですよね? だって、そんなこと、あり得ないです」
「私が佳乃子をからかうと思う?」
「違うのですか……? 違うなら、」

 処女受胎でないのなら――男と交わって懐妊したということ?

「……ごめんなさい」
「なんで、何故ですか? なんで……っ」


< 131 / 176 >

この作品をシェア

pagetop