聖女の愛した花園
お気に入りだったさくらんぼ柄のドレスよりも、母が用意したシルクのエレガントなドレスが正しい。
「さゆりお嬢様はまだ幼いのに既に立派なレディでいらっしゃる」
「流石はあの白雪財閥のご令嬢ですわ」
私を取り巻く大人たちは皆口々に私を褒める、流石は白雪の娘だと。そうするとお父様もお母様も「さゆりは自慢の娘です」と言ってくださる。だから私は、やっぱりこれが正しいのだと安堵する。
両親の望む「完璧」を追求しなくてはならない。完璧でなければ、私は捨てられる。白雪家の令嬢として正しい振る舞いができなければ、私は両親からは愛されない。幼いながらにそんな強迫観念を抱いていた。
実際両親は私のことを我が子として可愛がり、愛しているわけではなかった。
両親は政略結婚だった。父は白雪家に相応しい家柄で子どもが産める女なら誰でも良かったし、母は自分のステータス、品位を落とさず金を持っている男なら誰でも良かった。互いに利害が一致し、一人子どもができたらその時点で目的は達成されていた。
父にとって私は白雪財閥を継ぐための器であり、母にとって私は自分を美しく着飾るためのアクセサリーなのだ。家では冷え切っていた家庭だけれど、外ではおしどり夫婦、仲の良い親子として振る舞っていた。その方が都合が良いからだ。