聖女の愛した花園


 そう、本当の私は空っぽなのだ。空っぽの器の中にたくさんの理想を詰め込み、何とか外見は良く見せられているけれど中身は何もない。だって、誰も私自身を求めていないから。私に求められるのは、白雪家の美しくて完璧な令嬢、学院のマドンナで完璧な聖女。そうじゃない私なんて誰も興味ない、誰も愛してくれない。そして私も人の愛し方を知らない。考えるより先に相手の求めている振る舞い、言葉を察知してしまうから自分の本心が何か自分でもわからない。自分が嫌われないことに精一杯だったからかもしれない。

 *

 そんな私が初めて好きになりたいと思った相手が、蘭華だった。蘭華とは白雪家のパーティーで出会い、以来一緒に遊ぶ仲になっていた。両親はいつも不在で独りぼっちだった私が初めてできたお友達だった。私のことを「さゆちゃん、さゆちゃん」と慕ってくれる蘭華がかわいかった。ある時、蘭華に訊ねたことがある。

「ねぇ蘭ちゃんはどんな私がいい?」

 私に対して何をしてもかわいいと言うから、蘭華が本当に求めている「さゆちゃん」は何だろうと思って訊ねてみた。すると蘭華は不思議そうに首を傾げる。

「どんな私、って? さゆちゃんはさゆちゃんでしょ」
「私に何をして欲しいとか、そういうのないの?」
「えっ。うーん……」

 蘭華は少し考えてからこう答えた。

「蘭華のこと好きでいて欲しい」
「え?」


< 140 / 176 >

この作品をシェア

pagetop