聖女の愛した花園
「さゆり、騙されちゃダメよ。どうせ彼女はあなたが白雪財閥の娘だからいい顔してるだけなんだから」
「蘭華、どうしてそんな風に言うの?」
思わずそう言ってしまった後、しまったと思った。今の言葉は間違いだった。蘭華の表情が歪んでいたけれど、必死に泣くまいと堪えている。
「だって……っ」
「ごめんね、蘭華。それでも今は彼女に寄り添ってあげたいの」
「なん、で……? さゆりは、私のこと好きじゃないの?」
「そんなわけないじゃない。大好きよ、蘭華のこと」
「だったらどうして私を選んでくれないの!?」
ヒステリックに叫ぶ蘭華を見て、どうしたら伝わるだろうと考えた。私は蘭華を選ばなかったわけではない。蘭華のことも好きだし、一緒にいたいと思っている。でも佳乃子のことも放っておけない。
「選ぶとか選ばないとか、そういうことじゃないの」
「……っ、もういい」
「蘭華!」
蘭華は走り去って行ってしまった。私はなんて声をかけてあげるのが正解だったのだろう。なんて言ってあげたら蘭華を傷つけずに済んだのだろう。
それから蘭華は私を避けるようになってしまった。その分佳乃子と一緒にいることが多かったから、やっぱり私は蘭華より佳乃子を選んだということになるのだろうか。蘭華のことは多分好きなはずだけど、彼女の求めていたものではなかったようだ。人を愛することは難しいと、この時感じた。