聖女の愛した花園
父に愛人がいるのは何となく知っていたので、別にショックではなかった。むしろ母にも愛人がいる。あの二人は表向きだけおしどり夫婦を演じる仮面夫婦だから互いに夫婦としての愛情はない。だから外で好き勝手遊んでいるうちに生まれたのが流奈というわけだ。
きっと流奈は私を憎んでいる。父に捨てられた筒見母娘から見たら、幸せな家庭を築いている私たち親子が憎らしくて仕方ないのだろう。本当は円満な家庭なんて真っ赤な嘘なのに。もしかしたら流奈は復讐心を内に秘め、リリスに入学してきたのかもしれない。私を貶めたいと思っているかもしれない。
だが流奈が腹違いでも自分の妹だと知った時、嬉しいと感じた。蘭華には兄と弟がいて、時折兄弟の話を聞く度に羨ましく思っていたからだ。憎まれていたとしても、流奈のことを愛したいと思った。
「……なんて言ったら、流奈はもっと怒るわよね」
私のことを憎んでいたとしても、その憎しみすらも愛したいと思う。自分でも気が狂っている自覚はあるが、それだけ血の繋がりとは特別なものなのかしらと思った。だってお父様にもお母様にも愛されていなくても、私は愛したいし愛されたいと思うから。
とはいえ流奈とはこれまで通り、一定の距離を保った交友を続けた。血縁関係を知ったのはこちらが勝手に調べたからだし、「私たち姉妹よね」と名乗り出たところで酷い嫌味にしかならない。
流奈に何か目的があったとしても、それを暴くつもりもない。ただ遠目から見守っていたい。自分に対する復讐を見守るなんて馬鹿げた話だとは思うけれど。