聖女の愛した花園


 *

 相変わらず偽りの聖女を演じ続ける私に転機が訪れたのは、ある日渚に呼び出されたことがきっかけだった。渚とは同じ弓道部員として切磋琢磨していた仲であり、渚が黒薔薇副寮長になってからは幹部生としての交流も増えていた。

 けれど渚はどこかクールで、あまり他人に深入りしない。だから私も部活以外で話す機会は少なかったので、呼び出された時は驚いた。渚のおばあさまが亡くなり、忌引きで数日休んだ後のことだった。何だか渚はいつもより疲れた顔をしていた。

「さゆり、うちの話を聞いてくれる?」

 そう言って話してくれた渚の話は、壮絶なものだった。姫宮家は代々女性が家を継ぎ繁栄させてきたことは知っていたけれど、未だに双子を忌み子としていたり男児を呪いだとしているだなんて。

「その呪われた双子の男が、私なんだ」
「えっ……どういうこと?」

 更に告げられた真実は衝撃的で信じがたいものだった。

「私は本当は男なんだ。母は未だに私のことを亡くなった姉だと思い込んでいるけれど」

 話してくれた渚の人生は、過酷すぎるものだった。実の母に愛されないばかりか、死んだ姉の身代わりにされている。未だに姉の死を受け入れることができず、渚は姉として生きるしかないだなんて。涙なしには聞けなかった。

「渚が……そんなにつらい思いをしていたなんて」
「もう慣れたと思っていたけど、まだ母の中に自分はいないんだと思って……」
「渚……」
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